英語を母語とする人が仕事で使えるレベルの中国語を身につけるには、フルタイムで2年近くかかります。米国務省の外務職員局(FSI)の計画では88週間、授業だけで約2,200時間に、自習の時間が加わります。簡単な会話ならもっと早く、台湾の公式な中国語試験TOCFLは、中国語圏の外で学ぶ場合、基礎級(Level 2)までの学習時間を480〜720時間としています。1日2時間なら約1年、1日1時間なら約2年です。なお、日本語を母語とする人向けの公的な時間数は見つかりませんでした。この記事では、それぞれの数字が何を測っているのか、カレンダーにするとどうなるのかを見ていきます。
FSIの「2,200時間」は英語話者のための数字
2,200時間という数字の出どころは、アメリカの外交官に語学を教える外務職員局(Foreign Service Institute、FSI)です。FSIは、受講者がふつう何週間で目標に届くかによって、言語をグループに分けています(米国務省)。
| FSIの分類 | 言語の例 | 研修期間 |
|---|---|---|
| I | スペイン語、フランス語、イタリア語 | 24〜30週 |
| II | ドイツ語、インドネシア語、スワヒリ語 | 約36週 |
| III | ロシア語、タイ語、ベトナム語 | 約44週 |
| IV | 中国語、広東語、日本語、韓国語、アラビア語 | 88週(授業2,200時間) |
表のとおり、日本語も中国語と同じいちばん長いグループに入っています。この表は英語を母語とする人にとっての難しさで、FSIはこのグループを「英語のネイティブスピーカーにとって非常に難しい言語」と説明しています。日本語話者についての数字は出していません。
数字を読むときに押さえておきたい点が3つあります。
目標がとても高いこと。 この期間は、アメリカ政府機関が使う物差しであるILRの尺度で、話す力と聞く力のレベル3を目指したものです。レベル3は「実務、社交、仕事に関する話題について、公式・非公式のほとんどの会話に効果的に参加できる」段階です(ILRのレベル説明)。外交官が中国語で仕事をこなすレベルで、ネイティブ並みではありませんが、レストランで注文できるレベルよりはるかに上です。
フルタイムの1週間だということ。 FSIの典型的な1週間は、授業23時間と自習17時間です。88週間続けると、合計でおよそ3,500時間。それも、言葉を学ぶことが仕事の大人の話です。
平均だということ。 かかる時間は、本人の素質、これまでの語学経験、授業の時間数によって変わると、FSI自身が書いています。
日本語話者なら、漢字を知っていることは読み書きでかなり有利だろうと私たちは考えていますが、これはデータではなく見方です。台湾は繁体字を使うので、學と「学」のように形の違う字もあります。「日本人なら日常会話まで200〜300時間」と紹介する記事もありますが、出典が示されたものは見つかりませんでした。
「会話ができる」とはどのくらい?
「会話ができる」はあいまいな言葉ですが、同じILRの尺度がその範囲を示してくれます。レベル1は「身近な話題について、ごく簡単な対面の会話を続けられる」段階で、相手のネイティブはゆっくり話したり、くり返したりしてくれます。レベル1+は「旅行や宿泊で必要なことのほとんど」をこなせる段階。レベル2になると、ふだんのよくある会話のほとんどを、すらすらとはいかなくても自信を持ってこなせます。
「中国語で会話できるようになりたい」と言うとき、たいていはレベル1+から2のあいだを指しているはずです。友だちの家族と、仕事や旅行や食べ物について、ゆっくり、間をあけながら話せる段階です。これは私たちの解釈で、公式な定義ではありません。
台湾の華語文能力測驗(TOCFL)も、レベルを似た言葉で説明しています。基礎級(Level 2)では、自分の経歴や毎日の生活、身近なことを簡単なフレーズや文で説明でき、進階級(Level 3)では、予定や出来事を順を追って説明し、理由を簡単に述べられます(TOCFLのガイドライン(英語、PDF))。
最初のレベルは、たとえばこんな文です。
- 我在學中文wǒ zài xué Zhōngwén · ㄨㄛˇ ㄗㄞˋ ㄒㄩㄝˊ ㄓㄨㄥ ㄨㄣˊ中国語を勉強しています
- 我學中文三個月了wǒ xué Zhōngwén sān ge yuè le · ㄨㄛˇ ㄒㄩㄝˊ ㄓㄨㄥ ㄨㄣˊ ㄙㄢ ˙ㄍㄜ ㄩㄝˋ ˙ㄌㄜ中国語を勉強して3か月になります
早いうちに言われるはずの言葉も2つ。実力の判定ではなく、励ましとして受け取ってください。
台湾の目安:TOCFLの推奨学習時間
TOCFL(華語文能力測驗)は、台湾の公式な中国語能力試験です。実施する委員会は、レベルごとの推奨学習時間を公開していて、中国語圏で学ぶ場合と、それ以外の場所で学ぶ場合の2つの欄があります(TOCFL)。
| TOCFLのレベル | 中国語圏で学ぶ場合 | それ以外で学ぶ場合 |
|---|---|---|
| 準備級(Novice) | 30〜120時間 | 60〜240時間 |
| 入門級(Level 1) | 120〜240時間 | 240〜480時間 |
| 基礎級(Level 2) | 240〜360時間 | 480〜720時間 |
| 進階級(Level 3) | 360〜480時間 | 720〜960時間 |
| 高階級(Level 4) | 480〜960時間 | 960〜1,920時間 |
| 流利級(Level 5) | 960〜1,920時間 | 1,920〜3,840時間 |
| 精通級(Level 6) | 1,920時間以上 | 3,840時間以上 |
委員会は、この時間はあくまで参考だとしています。どれだけ速く進むかは、本人の能力、授業の密度、間をあけずに続けているか、教室の外に中国語の環境があるかで変わります。最後の点は、2つの欄の差がそのまま示しています。言葉に囲まれて暮らすと、目安の時間は半分になります。
カレンダーにすると
中国語圏の外で学ぶ場合の時間を、毎日勉強したとして期間に直すと、次のようになります(概数)。
| 1日の学習時間 | 基礎級(480〜720時間) | 進階級(720〜960時間) |
|---|---|---|
| 30分 | 約2.5〜4年 | 約4〜5.5年 |
| 1時間 | 約16〜24か月 | 約24〜32か月 |
| 2時間 | 約8〜12か月 | 約12〜16か月 |
注意点が2つあります。ひとつは、これが授業時間、つまり先生のいる教室での時間だということ。自習がどう換算されるかはTOCFLも示していませんし、声に出して話す1時間と、単語カードを眺める1時間は同じではありません。もうひとつは、最初の会話は基礎級よりずっと前にできるということ。自分について短く答えたり、簡単に説明したりする入門級(Level 1)の目安は240〜480時間です。
中国語に時間がかかる理由と、やさしいところ
時間がかかる理由は3つあります。ひとつめは声調です。どの音節にも声調があり、声調が違うと別の言葉になることがあります。中国語には4つの声調と軽声があります。ふたつめは、漢字が音をそのまま表さないこと。日本語の音読みとは別に、中国語の読みをひとつずつ覚える必要があります。みっつめは、英語話者にとって共通の単語がほとんどないこと。FSIの数字には、この差も含まれています。
うれしい驚きは文法です。動詞は人称や時制で形が変わらず、名詞のほとんどには複数形がなく、文法上の性もありません。我學中文は「私は中国語を勉強する」で、誰が勉強しても、いつ勉強しても學の形は同じです。
学習時間をむだにしないために
初日から、声に出して、短くても文で話しましょう。最初の1か月の進め方は台湾華語の勉強方法にまとめています。週に一度たくさんより、毎日少しずつ。TOCFLも、続けて学んでいるかどうかを進み方を左右する要素に挙げています。音を書き表す方法は早めに決めましょう。ピンインでも、台湾の注音符号でもかまいません。そして、授業の外でも中国語にふれること。TOCFLの目安が半分になるのは、まさにこの要素です。ドラマ、ポッドキャスト、言語交換、そして旅行。台湾に行くときの最初のひと言は中国語の挨拶にまとめました。
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Bopomoにできること
Bopomoは、その学習時間のうち「話す」部分のためのiPhoneアプリです。AIチューターのリンと台湾をめぐる旅をしながら話すと、リンはあなたが実際に言ったことに、台湾の発音で返事をします。音節の上には声調の形が描かれます。チェックするのは言いたいことが伝わったかどうかで、声調をひとつずつ採点する機能はまだありません。中国語に必要な時間そのものは変えられませんし、正直に言って、変えられる方法はありません。できるのは、その時間のうち声に出して話す時間を増やすことです。App Storeにはまだ並んでいません。
よくある質問
中国語の習得にはどのくらいかかりますか?
仕事で使えるレベルなら、米国務省のFSIは英語話者でフルタイム88週間(授業2,200時間)としています。簡単な会話なら数百時間で、台湾のTOCFLは中国語圏の外で学ぶ場合、基礎級(Level 2)まで480〜720時間を目安にしています。
日常会話レベルまで何時間かかりますか?
自分や毎日の生活について簡単に話せる段階なら、TOCFLの基礎級の目安で、1日2時間で約1年、1日1時間で約2年です。台湾など中国語圏で暮らしながら学べば、その半分ほどが目安です。
1年で中国語を話せるようになりますか?
毎日2時間ほど練習すれば、1年で簡単な会話ができる段階には届きます。仕事で使えるレベルにはもっとかかり、FSIの計画ではフルタイムで2年近くです。
日本人は中国語を早く習得できますか?
FSIの数字は英語を母語とする人のもので、日本語話者についての公的な時間数は見つかりませんでした。漢字を知っていることは読み書きで有利だと私たちは考えていますが、データで確かめられたものではありません。
台湾に留学すると早く身につきますか?
たいていは早くなります。TOCFLは、中国語圏で学ぶ場合の推奨学習時間を、それ以外の場所の約半分としています。



